人と思想 201 小林秀雄
小林秀雄にとって批評とは、作品創造に随伴する自意識の活動を追跡しながら、天才たちの個性・独創性を明らかにする営みであった。小林はこれを、「宿命の主調低音」を聞くという言葉で言い表す。この手法を駆使しながら小林は、ランボー、ドストエフスキー、モーツァルト、ゴッホといった天才芸術家たちの宿命の形に迫っていく。その批評の対象は、芸術家のみならず、ベルクソン、本居宣長といった東西の思想家にまで及んでいる。 昭和という時代の文学・思想は、小林抜きでは考えられないとも言われる。「批評の神様」、「言葉の魔術師」、「教祖」など、小林にはさまざまな称号が奉られている。しかし、そうした大げさなレッテルに覆われた、批評家小林の真価はどこにあるのか。本書は、天才たちの宿命と渡り合いながら二十世紀の日本を生き抜いた小林自身の宿命の形を、その作品に即して丁寧に説き明かした、「普通の解説」の決定版である。 ◆目次(内容と構成) はじめにーー二十世紀日本の宿命 第1章 文学への道 生い立ちと少年時代 象徴派詩人との出会い 第2章 青春との訣別 批評の原点ーー『ランボオ1』 「地獄の季節」 第3章 文壇初登場 批評家としての出発ーー『様々なる意匠』 「意匠」の楽屋裏 第4章 模索の時代 昭和文壇の総浚いーー『アシルと亀の子』『Xへの手紙』 作家のリアリズムーー『ドストエフスキイの生活』 第5章 歴史と自由 尋常時の思想ーー『杭州』『満州の印象』 美としての歴史ーー『無常という事』『実朝』 第6章 人生という形式 かなしさは疾走するーー『モオツァルト』 自我の「巨きな眼」--『ゴッホの手紙』 第7章 批評の終焉 未完のベルクソン論ーー『感想』 ダイモンは沈黙したーー『本居宣長』 あとがき 参考文献 小林秀雄年譜 人名さくいん